第1回「物流2024年問題」が4月から始まった?

物流ジャーナリスト・キクタの連載コラム
<あるある! 物流カン違い>物流分野に漂う12の勘違いを正す!

(2024.4.15)

ドライバーの時間外労働に上限規制2024年4月から開始

ついに「2024年4月」が来てしまった! と慌てふためいている方がおられるかも知れない。政府が重い腰を上げたと思ったら、矢継ぎ早に「物流2024年問題」回避への本格施策を打ち出したことで、この1年半、一般マスコミの報道機会も増え、「やっと物流が世間様から注目してもらえる時代が来た……」と目を潤ませている物流関係者は、私だけではないはずだ。

トラック配送ドライバーの総拘束時間と時間外労働の図

もちろん喜んでばかりはいられない。2024年4月から「ドライバーの時間外労働時間の上限規制が年間960時間」「総拘束時間が年間3300時間」になった。これは働き方改革の視点では、まったく当然のことである。「年960時間」とは月にならせば「80時間」、これでもまだ過労死ラインなのだから。だがそれ以上にドライバーを働かせてきた企業は、かなりの物流供給力を減らさざるを得ない。そうなると「運んでもらえない荷主」が続出する(!)可能性があるのだ。

だが、この法規に言う「年間」とは、いつからいつまでなのか? 2024年4月1日~2025年3月31日?……多くの会社ではそうだとしても、一律に決まってはいない。この「年間」は事業者ごとに36協定で決定され、起算日が暦年の「1月」なら、規制がかかるのは2025年1月~同12月の1年からだ。あまり知られていないようだが、本例のように法施行の2024年4月以前に年期が始まっていれば、その年期が終わるまでは制限対象にならないのだ。

本当の危機が顕在化するのは2025年!?

では24年問題による「物流危機」は、いったいいつ来るのか? 「年間労働時間」だけが問われるなら、それぞれの「期末」が危ない。2025年3月の年度末繁忙期直前に、「時間外労働時間/拘束時間が上限に達してしまった!」となれば、そのドライバーはもう時間外労働/拘束ができない。もし満杯者が続出したら、悲劇である。先を見る荷主が恐れ、数年前から対策を講じてきたのは、このホラーストーリーを回避するためだったのだ。一方、1月起算の会社なら「2025年12月」の年末繁忙期がアブない。両者は「年末・年度末」が鬼門なのである。

中には年期が「早生まれ」で、規制対象年度末が2年近く先になる場合もあろう。だからと言って、「なあんだ」と脱力するのはまだ早い。期末近くになって慌てないよう、事前に運送事業者は、月々のドライバーの時間外労働・拘束時間を綿密に集計し、先取りで予測し、計画的に差配管理できる仕組みを構築しておかなければならない。

荷主なら協力会社の実績管理情報を共有可能にしておくべきだ。手書き報告書の集計でもよいが、これを機に昭和のアナログ物流を脱却し、デジタル管理で生産性向上を図らなければ、生き残りが難しい時代がやって来る。

真の物流2024年問題を打開する対策とは何か

年末、年度末の繁忙期にドライバーが不足しないよう計画を立てるために勤務時間管理をデジタル化で備える

だから、「物流2024年問題」が年間集計で顕在化するのは、最速で「2025年1-3月」となる。ただし期末に向けた1年間の労働・拘束時間の集計管理は、まさに現在、今月から開始しないといけない。この労務管理の仕組み改革と、現場作業の自動化・デジタル化、経営戦略としての共同物流・モーダルシフト、拠点分散化・中継輸送――これらの合わせ技で初めて、「物流2024年問題克服」への道は拓かれる。

最後に、以上の施策はすべて、「手段」である。では「目的」は?――それは働く人、ドライバーの労働環境を改善することである。人間らしく尊厳のある、誇りの持てる仕事へと、物流を高めること。それが関係者に突き付けられた、真の「物流2024年問題」なのだと私は思う。

(参考文献)菊田、Japan Innovation Review、「物流ミライ妄想館①2024年物流危機」は“2025年”に訪れる!」、JBプレス社、2024年1月
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